2016年度第2回研究会

 2017年3月4日(土)、信州大学教育学部にて2016年度第2回研究会が開催されました。今回は日本教育工学会研究会と教育システム情報学会北信越支部の学生研究発表会と並行して開催され、3研究会合計で200人以上の参加者となりました。

 新学習指導要領で示される基本方針に対して教育メディアはどのように応答するのか、幅広く考えながら将来の実践や研究の方向性を探究する場としたく、「新学習指導要領と教育メディア」をテーマとし、12件の研究発表(午前:1会場、午後:2会場)がありました。うち、7件はテーマとの関連が強いものでした。
 「生活科におけるタブレットを持ち帰る活動を取り入れた学習活動の検討」では、小学校1年生の生活科の授業でのタブレット活用の取り組みの成果と課題が報告されました。「算数科『量と測定』領域における反転授業導入による児童の変容」では、タブレット端末を活用して反転授業の形式で小学校5年生の図形の学習を行った事例から、学習内容の理解に効果が見られたことが報告されました。「既存の情報端末を用いて行った小学生を対象としたプログラミング学習の試み」では、事例を通して、特別な機器を購入しなくても小学校でプログラミング学習の実現が可能であることが示唆されました。「プログラミング的思考の一考察」では、小学校でのプログラミング教育のあり方に関する議論を概観し、プログラミング的思考を育成する上での課題の整理と提示が行われました。
 「知のアソシエーションの基盤をつくる双方向債務型『助け合い』活動の提案および活動状況可視化システムの開発」では、学習者の協同による学習の基盤となる様式のあり方の提示と、それに基づいた協同的な活動を支援するための状況可視化システムの開発について報告されました。「メタ・ルーブリックとしての『学びの質ルーブリック』の活用可能性」では、対話的で深い学びに組織的に取り組むためのカリキュラム・マネジメントを展開させるうえで求められるツールのあり方が検討されました。「情報活用の実践力に関する評価問題の実施と評価」では、探究的な学びを支える情報活用の実践力について、紙面での調査問題の結果をもとに、調査から明らかになった点と、調査の実施および採点に関する課題が提示されました。
 残りの5件でも、ICTやメディアを活用した事例の報告など教育メディアに関する幅広い研究成果が報告されました。
 「体育授業における『指導ことば』に対する視点の育成」では、子どもに運動を教える際の教師の「指導ことば」の育成を意図した大学の授業における映像活用の事例が報告されました。「保育での放送番組の活用で幼児期に育まれる力」では、幼稚園における放送番組の継続視聴において、クラスで同一視聴し、感想等の話し合いや感じたことをもとに事後活動をすることで「物事に取りかかるとき、計画的に進める」という非認知スキルの伸びが可視化できる可能性が指摘されました。「360度ドーム映像の臨場感を利用した異文化学習」では、ドーム映像を用いて外国語学習を伴う異文化学習を行う事例が報告され、平面映像を用いた場合よりも情報量が多いことが学習において効果的にはたらく可能性が示唆されました。「メディア史のデジタル・ストーリーテリング作成によるホープレスネス及び時間型態度の変化 2:協同学習」では、学習者が自らのメディア史を制作する活動を協同的に行う試みが紹介され、その効果と課題が検証されました。「西本三十二/キルパトリック往復書簡集の研究上の価値」では、西本三十二が終戦直後に交わした書簡集が発見されたことが報告され、研究上の価値が提示されました。

 全体を通して、テーマについて幅広い視点から議論がなされ、質疑応答も活発に行われました。また、今回は他学会の研究会との並行開催ということもあって、研究発表を中心に参加者の交流も積極的に行われました。本研究会に参加いただいた皆様にあらためてお礼を申し上げるとともに、研究会の開催に際してご尽力いただきました日本教育工学会研究会ならびに教育システム情報学会北信越支部の関係者の皆様に、深く感謝申し上げます。

文責:佐藤知条(湘北短期大学)

2016年度 第2回研究会の開催(日本教育工学会研究会との並行開催)
テーマ「新学習指導要領と教育メディア/一般」

国内研究会担当委員長:稲垣忠/東北学院大学
本企画担当:佐藤知条/湘北短期大学

今年度中に全体像が示される新学習指導要領では,学習課程の質的転換(アクティブ・ラーニングの視点)を重視する基本方針のもと,外国語活動の抜本的強化,プログラミング教育の導入,高等学校における科目の変更,多様な教育ニーズに対応する学びの場の確保,地域・家庭・学校の連携・協働の活性化などが示されると見こまれています。
これらに対して教育メディアはどのように応答するのか,幅広く考えながら将来の実践や研究の方向性を探究する場としたく,今回は「新学習指導要領と教育メディア」をテーマにした発表を募集します。その他、本学会がテーマとする内容に関する研究についての発表も募集します。
日本教育工学会(JSET)研究会「協働的な学びづくり/一般」と並行開催(同じ建物の別教室で開催)します。受付・研究報告集の購入は個別ですが、双方の研究会に参加できます。

■日程  2017年3月4日(土)10:00~15:35(発表件数により変動することがあります)
■場所  信州大学 教育学部 講義棟(キャンパスマップ4番) 長野市西長野6の口
■参加費 資料代1,000円

■発表の申し込み
 本研究会は学会員、非学会員問わず発表することができます。
 下の申し込みフォームより、発表申し込みをよろしくお願いします。
 ・発表申し込み(下のフォームにてタイトルと著者):2017年1月22日(日)まで
 ・原稿提出(メールにて提出):2017年2月12日(日)まで
  原稿の形式・テンプレートはこちらを参照ください。
※プログラム編成の都合上、同日の教育工学会研究会と本研究会の両方に第一発表者として登録することはできません。連名は可能です。また、両方の研究会に参加することはできます。

■参加の申し込み(受付は締め切りました)
 本研究会は発表をしない参加も受け付けております。発表と同様に
以下の申し込みフォームをご利用いただき、「発表しない」にチェックを入れて下さい。
懇親会へご参加いただくことも歓迎します。