2012年度ワークショップ

1月26日(土)株式会社内田洋行新川本社・新川第二オフィスにて、「学習科学と教育メディアの接点を探る」と題して、ワークショップを開催しました。当日は、学習科学に関する基礎的な事項について学ぶ機会を設け、同時に、学習科学のアプローチを教育メディア研究に取り入れた研究発表を行い、それらについて議論しました。

まず、静岡大学の大島純先生を講師としてお招きし、「『学習科学』再考ー研究者の回顧分析」という演題で、講演をいただきました。
大島先生にとっての学習科学のミッションは、

  • 「学習科学の知見」と「前提条件」から教授学的な原則(デザイン原則)を構築
  • 「新しい学び」を適切に評価する方法の開発及び普及
  • イノベーションの「実現」と「普及」

の3つであること。

デザイン研究という方法については、「認知」→「観察」→「解釈」のサイクルについて、説明されました(図1)。特に、観察については、学びの観察、協調文献読解活動、外化物の評価、議論の数、議論への貢献度、CSCLの書き込み、などがあることを解説されました。
また、一般化可能性の問題として、三者(教授者、学習者、研究者)のstakeholdersによるAction Researchについては、図のように示されました(図2)。

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学習科学と教育メディア研究。方法論や言葉の定義(のぼり方)はちがうかもしれないが、目指す頂上は近いのではないか、そのような感じもしました。

学習科学のアプローチを教育メディア研究に取り入れた研究発表については、4件ありました。

 根本淳子氏は、「ストーリー型カリキュラムのための学習環境の構築」と題して、文脈を用いたストーリー型カリキュラム(SCC)の実施と改善内容につい て、年次ごとに整理をしての報告がありました。また、本研究の成果を広く還元するためには、“異なる目”も必要であるとの考えが示されました。

 加藤由佳里氏は、「国内外の日本語教師の専門的成長を支援する交流活動コミュニティの構築」と題して、自らの成長を自ら考える「教育の学問的研究 (SoTL :Scholarship of Teaching and Learning)」を支援している中で、日本語教師からの意見をふまえ、より認知的な負荷を軽減して省察活動に取り組める工夫を試みていることの報告が ありました。

岸磨貴子氏は、「ICT を活用した日本語教員養成のための学習デザイン -デザイン実践アプローチに基づいたデザイン原則の生成 -」と題して、コルブの経験学習の学習モデルを土台にしたデザイン実践アプローチに基づいて、経験学習を促す真正な学習活動のための学習環境デザインにつ いての提案がありました。

遠海友紀氏は、「初年次教育におけるルーブリック作成を取り入れた授業設計」と題して、学習の評価基準となるルーブリックに学生の意見を取り入れる実践を行い、1)目標を設定することに慣れる機会の設定、2)目標を用いて振り返りを促す機会の設定、3)学生が評価活動 に参加し学習に対する責任感を醸成する取り組みの導入、が必要であることが明らかになったことについて報告がありました。

これらを受けて、参加者は、4名の発表者のどこかのグループに入り、教育メディアと学習科学の接点について、さらに議論を深めました。夜の懇親会も含め、大変有意義な1日となりました。今後もこのような合同企画を開催していきたいと思っています。

(文責:企画委員長、中川一史)

企画委員会・編集委員会の合同企画のお知らせ
「学習科学と教育メディア研究の接点を探る」ワークショップ

概要:日本教育メディア学会の編集委員会と企画委員会が合同で「学習科学と教育メディア研究の接点を探る」ワークショップを企画しました。教育メディア研究の近接領域として学習科学とのコラボレーションを考えました。来年度の特集論文のテーマを「学習科学と教育メディア研究との接点」とし、このワークショップでの成果を学会誌の特集論文につなげていきます。具体的には、ワークショップに静岡大学の大島純先生らをお招きして、学習科学に関する基礎的な事項について学ぶ機会を設けます。同時に、学習科学のアプローチを教育メディア研究に取り入れた研究を会員から募り、ワークショップではそれらの研究発表について議論し、特集論文として執筆していってもらうことを考えています。

来年度の特集論文「学習科学と教育メディア研究の接点」に投稿を希望する会員は、このワークショップに参加し、研究発表をしていく方向で論文の執筆を検討していただきたく思います。

このワークショップは、教育メディア研究における新しい研究アプローチを模索するためのひとつとして考えておりますので、是非、多くの方に参加していただきたく思います。また、本ワークショップは、本学会の非会員の方にも参加いただけますので、関心のある方にも声をかけてください(※ただし、論文の発表、投稿については、会員に限ります。)

1.テーマ:学習科学と教育メディア研究の接点を探る

2.日 時:2013年1月26日(土曜日)午前10時から午後5時
午前中は、「学習科学」に関するセミナー、午後は論文発表と質疑応答、休息を挟んで、全体討議になります。

9:30~     受付開始
10:00~10:20 開会、あいさつ、趣旨説明
10:20~12:00 「学習科学を学ぶ」講師:大島純(静岡大学)
12:00~13:00 昼食
13:00~13:30 「ストーリー中心型カリキュラムのための学習環境の構築」根本淳子(熊本大学)
13:30~14:00 「ICT を活用した日本語教員養成のための学習環境デザイン:デザイン実践アプローチに基づいたデザイン原則の生成」岸磨貴子(京都外国語大学)
14:00~14:30 「国内外の日本語教師の専門的成長を支援する交流活動コミュニティの構築」加藤由香里(東京農工大学)
14:30~15:00 「初年次教育におけるルーブリック作成を取り入れた授業設計」遠海友紀(関西大学大学院)
15:00~15:30 休憩、館内見学
15:30~17:00 総合討議
17:00~     閉会
17:10~     懇親会場へ移動

3.場 所:株式会社内田洋行 新川本社・新川第2オフィス
東京都中央区新川2-4-7
会場までの地図: http://www.uchida.co.jp/seminar/121106_1107/access.html

4.登壇者:大島純(静岡大学)(その他の参加者については現在調整中)

5.内容:学習科学の基礎的なことについて学ぶとともに、教育メディア研究に学習科学のアプローチをどのように取り入れることができるか、ワークショップ形式で学習します。

8.会費:2000円 定員:35名
懇親会費:5000円(ウェブで事前受付を行います)

ワークショップ参加の受け付けは、11月15日からウェブ上で行います。
まだ、少し余裕があります。お早目の参加申し込みをお願いします。
定員になり次第締め切ります。

参加申込みフォームは こちらです。

9. 必読論文・図書

次の論文・図書を事前に読んでからの参加をお願いします。ワークショップは、これらの文献を読んだものとして進めていきます。もし、以下の文献が手に入らない場合は、ご連絡を(連絡先: edit@jaems.jp )お願いします。

ワークショップ前に事前学習としてサイボウズLiveというCMSにてプレディスカッションをします。文献はサイボウズLive内でも閲覧できるようにしておりますので、もし、以下の文献が手に入らない場合は、サイボウズLiveからダウンロードをお願いします。サイボウズLiveに登録をするには、edit@jaems.jp宛にメールを送ってください。 サイボウズLiveでのプレディスカッションへの参加は、任意です。申し込みの際に、「備考欄」にて、「サイボウズLiveでのプレディスカッション参加希望」と追記してください。すでに参加申し込みをされた方については、メールにてその意向を確認させていただきます。

  • 大島律子・大島純・田中秀樹.(2002).CSCLを用いた高等教育カリキュラムのデザイン実験:知識構築活動を支援する学習環境の構築.認知科学,9(3),409-423.
  • 大島純・大島律子.(2009).エビデンスに基づいた教育:認知科学・学習科学からの展望.認知科学, 16(3), 390-414.
  • 白水始.(2012).V-8 デザイン・メソッド. 茂呂ほか(編),状況と活動の心理学:コンセプト・方法・実践(pp. 262-265).
  • 益川弘如.(2012).デザイン研究・デザイン実験の方法.清水ほか(編),教育工学選書3:教育工学研究の方法(pp. 177-198).

10. 担当者(問い合わせ):
日本教育メディア学会 編集事務局 久保田賢一(関西大学 総合情報学研究科)
Email: edit@jaems.jp

11.了解事項
ワークショップの様子をビデオ・写真撮影をします。ウェブで公開をする予定ですので、ご了承お願いします。不都合がある方は、事前に申し出をお願いします。

12.協力
(株)内田洋行のご厚意で会場を利用させていただきます。