放送教育SIGは,研究テーマを「1人1台端末時代の映像視聴能力」と設定し活動を開始し,令和7年2月8日(土)に第1回研究会をオンラインで開催した。これに続き,第2回を令和7年6月28日(土)にオンラインで開催し,放送教育の実践と研究の意義いついて整理した。

  1. テーマ「放送教育の温故知新②」
  2. 開催方法

第1回に続き,放送教育の研究者,制作者,実践者それぞれの立場から放送教育の歴史と成果や課題を振り返ることができる話題を提供し,若い世代からの質問に答えながら課題を整理し,今後の見通しを持つことができるようにした。オンラインのメイン配信会場には若手教員も集まり,話題提供の後に質問やコメントをする形式で進行した。

3 参加状況
・登録者数40名(番組制作関係者,実践者(学校教職員),研究者,教育行政,全放連等)
・事後アンケートへの回答20件

4 話題提供者と内容

(1)「放送教育SIGのねらいと第1回研究会報告」 宮城教育大学教職大学院 特任教授 菅原弘一
 「放送教育の意義と歴史」「教育観」「番組視聴のあり方」「放送教育のこれから」等の前回研究会実施後の意見を紹介し,SIGとして「放送教育」の再定義・価値の再発見を行っていきたいことを伝えた。
(2)「放送教育実践者・研究者として番組利用に思うこと」京都教育大学 理事・副学長 浅井和行
 実践者としての経験から,子供が自ら学び出すきっかけとなること,心を育て感性を磨くことや映像の多義性が放送番組の特性であることが語られた。特に,番組構成特性を活かし,学習のめあてを提示せずに番組を丸ごと視聴,全シリーズ継続視聴してきたことにより,番組が示す思考の流れに沿って子供たちが様々な気づきを得て成長してきたことが,実践のエピソードと共に語られた。

(3)「放送教育研究の意義と今後に向けて」 四天王寺大学 教授 木原俊行
 授業研究と教師の成長が専門という立場から「教材論:教科書・副読本とは異なる切り口」「授業論:活用スタイルは教員裁量」「研究コミュニティ論:放送教育研究は越境的」といった放送教育研究の意義を解説した。今後については,教員による番組活用のマネジメントを促すために,番組等の精錬,番組の特徴の説明や機会の開発,番組活用の必然性と可能性のマッチング好事例の提供などが提言された。
(4)放送番組の特性の活かし方について
 浅井先生からは,継続視聴により「豊かな心」や「感性」を育むこと,木原先生からは,教科書とは違う角度でつくられる教材により,思考・判断・表現の力を育むことについてコメントがあった。また,学級の実態に応じて教師が積極的に番組を選択できるよう,番組情報の提供システムを生成AIの時代に合わせて開発していく必要性についても語られた。

5 セミナーに対する感想等

(1)歴史と実践の価値再認識:放送教育の歴史と,それを支えてきた教師の実践の価値を再認識した。特に,「生・丸ごと・継続」等の理念の重要性。

(2)登壇者への高い共感と学び:高い共感と具体的な学びが得られたという意見が多数を占め,特に,「子どもが教育者を超えていく」「子ども中心の学び」という視点に,教育課題解決のヒントを見出している。

(3)多角的な視点の重要性:実践者,研究者,制作者という立場の違いはもちろん,放送教育実践とカリキュラム研究,教師教育研究といった異なる視点で放送教育を捉えることに意義を感じていた。

6 今後に向けての意見等

・テーマ「温故知新」の「知新」に関する勉強会への期待が示された。

・「温故」に対する若手の受け止めに対する関心が見られた。

・具体的な番組を取り上げて制作者,実践者,研究者が語り合う番組研究の提案があった。

・社会教育における放送利用の歴史や現在での利用から放送教育の原点を探ってほしいという要望があった。