会長あいさつ

会長挨拶
日本教育メディア学会 第10期会長 中橋 雄(日本大学)

 この度,日本教育メディア学会の会長を拝命いたしました。本学会の発展に貢献できるよう力を尽くしたいと思います。本学会は,教育メディア研究の学術的水準を高め,その普及発展を推進することを目的としています。視聴覚教育研究協議会から発展した日本視聴覚教育学会と日本放送教育学会が統合されて生まれた日本視聴覚・放送教育学会から名称変更され,現在に至ります。その源流は1950年代に確認でき,歴史的な蓄積がある学会です。
そうした歴史的な流れの中で,教育メディアを取り巻く様々な変化がありました。例えば,知識や技能の習得に重きがおかれていた時代から,それらを活用して課題を解決する学習や探究を行う学習も重視される時代へと変化しました。こうした学習観や教育観の変化は,教育内容や教育方法を捉え直す機会となりました。また,放送と通信のよさを活かしたコンテンツが開発・提供されるようになったこと,小・中学校の普通教室で大型提示装置,学習者用1人1台情報端末を活用できるようになったことなど,コンテンツやテクノロジーの変化もありました。
私は,約20年前の1999年,大学院生の時に本学会に入会し,研究活動を続けてきましたが,本学会は,こうした変化にしっかりと向き合い,柔軟に対応してきたように感じています。それは,研究者,教師,企業の方々といった多様な立場,ベテランと若手といった多様な世代の価値観が相互に作用することで可能となったことではないかと考えています。こうした研究の蓄積は,これからの時代を切り拓いていく上でも活かされるものであり,本学会の存在意義と社会的な責任は,さらに大きなものになっていくに違いありません。それを踏まえ,私は,この3年間の任期の間に,先人たちの築いてきた基盤を活かし,さらなる発展を目指して,重点課題として以下の3点に取り組みたいと考えています。
1つ目は,先人の知を継承するとともに新しい知を創造するために,ベテラン研究者と若手研究者が交流できる場をさらに充実させることです。本学会の発展を考えるならば,次世代を担う仲間を増やしていくことが重要になります。大学院生のみならず学部生でも学会に参加・交流・発表しやすい場を作ることが望ましいといえるでしょう。また,年次大会企画の中に若手研究者の研究を多くの方々に知っていただく機会を設けることや,新たな顕彰の機会を設けるなど,研究活動を奨励していくことができればと考えています。
2つ目は,研究倫理に関する意識を共有するための取り組みを行うことです。不正行為については,文部科学省において「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」が公開されるなど,一般的な理解は共有されていると考えられます。しかしながら,そうした一般的な理解を前提として本学会が運営されていることや,やってもよいことについては明文化されておらず,認識のズレが生じやすい状況にあります。会員が安心して学会活動に取り組めるように,論文投稿や研究発表の募集をする文書において研究倫理に関する認識を共有できるような内容を加えることができればと考えています。
3つ目は,会員からの意見を積極的に聞き取り,学会運営や具体的な企画に活かしていくことです。もちろんこれまでの学会運営においても会員にとって有益なサービスが展開されてきたと思います。しかし,それは学会運営の中核を担う人々が状況を捉えて企画してきたことが多く,会員に対して広く意見を募る試みはあまりなかったように思います。多様な世代,価値観をもった会員がいることを活かして,会員のアイデアに基づく将来構想を描き,新しい取り組みに挑戦したいと考えています。
以上のように,これまでに培われた本学会のよさを守りながら,絶えず進化していく学会を,皆さまと一緒に作り上げていきたいと思います。ご支援いただきたく,よろしくお願いいたします。

2022年1月23日