会長挨拶
日本教育メディア学会 第11期会長 村上 正行(大阪大学)
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日本教育メディア学会は,1954年に発足した「視聴覚教育研究協議会」(後に「日本視聴覚教育学会」へと継承)と1955年に発足した「日本放送教育学会」が統合されて,1994年に「日本視聴覚教育・放送教育学会」として発足し,1998年に改称して現在に至っております。この度,70年以上の歴史がある本学会の第11期の会長を拝命することになり,その重責を痛感するとともに,身の引き締まる思いです。本学会の発展に少しでも貢献できるよう,学会運営に全力で努めてまいりたいと思います。
私は2004年に本学会に入会し,今回副会長をお願いした寺嶋先生(大阪教育大学)との連名で初めて論文を投稿し,採録していただいたことを懐かしく思い出します。そこから20年,教育メディアを取り巻く環境は大きく変化してきました。GIGAスクール構想による1人1台端末の実現,「個別最適な学び」と「協働的な学び」の一体的な充実,コロナ禍におけるオンライン授業,教育・学習データの利活用,生成AIの教育的利用,などさまざまなトピックから分かるように,情報通信技術(ICT)の発展とともに,教育や学習に対する考え方も大きく変容してきたと言えます。こうした変化の中で,教育メディア研究の重要性はますます高まっており,本学会の役割をより一層アピールしていきたいと考えております。
そのために,先人たちが築いてきた基盤を継承しつつ,さらなる発展を目指して,次の3点に重点を置いて取り組んでいきたいと考えております。
1点目は,学会としての歴史を振り返り,改めて教育メディア研究のさらなる発展を目指すことです。そのため,時限付きの研究組織として特定課題研究(SIG)を発足することにしました。本学会の中心的なテーマとして実績を重ねてきた“メディア・リテラシー”,本学会の発足時からのテーマである“放送教育”,新たな教育メディア研究として取り組まれている“アートベース・リサーチ(ABR)”の3つのSIGを立ち上げ,年次大会の課題研究を始め,さまざまな活動に取り組んでいただきたいと考えております。会員のみなさまには,ぜひ各SIGの活動に積極的に参加していただければ幸いです。
2点目は,本学会がさらに活性化することを目指して,若手研究者の支援,育成に取り組んでいくことです。第10期の中橋前会長が創設された「学生研究奨励賞」を皮切りとして,大学院生や学部生,若手研究者による学会活動への積極的な参加を可能にする環境づくりを進め,議論を通じて研究を深められるようにしたいと考えています。
3点目は,学会運営の効率化,他学会との連携を進めることです。現在,研究者の業務負担の増加が問題となっており,学会自体の存在意義,学会運営の持続可能性なども課題として挙げられています。他学会との情報交換,連携を進めながら,できるだけ効率化,省力化した学会運営ができるように尽力していきたいと考えています。 これらの活動を実現していくためには,会員のみなさまのご理解とご協力が不可欠です。ぜひ会員のみなさまと一緒に,楽しく研究ができ,発展していく学会を作っていきたいと思います。ご支援のほど,どうぞよろしくお願いいたします。
2025年1月23日