2023年度日本教育メディア学会第30回年次大会にあたってのご挨拶
年次大会実行委員長 石井芳生(関西大学初等部)
第 30 回日本教育メディア学会年次大会を,2023 年 11 月 4 日(土),5 日(日)関西大学初等部で開 催することになりました。伝統ある年次大会の第 30 回という節目の年に,会場校を拝命し,身の引き締 まる思いです。関西大学は 137 年の歴史がありますが,初等部は 2010 年に設立された若い学校です。当 日は同キャンパス内の大学棟も会場としまして,皆様をお迎え致します。 新型コロナウイルス感染症拡大により 2020・2021 年度の年次大会,研究会は,オンライン開催を余儀 なくされたものの,2022 年度は,会員・参会者の皆様のご尽力により対面での開催を実現することがで きました。コロナ禍期間は,オンライン通信のノウハウや利点に気づくこともできましたが,それ以上 に,一堂に会し,自他の研究について議論できる対面の良さを改めて痛感した時間でもありました。 さて,昨今は,少子化の影響を受けて学校の統廃合や学生募集停止のニュースが後を絶ちません。加え て教職希望者の減少も深刻な問題になっています。また,人工知能チャットボットの誕生が社会問題と して取り上げられるなど,教育やメディアを取り巻く環境が日々進化・変化する実態を鑑みるにつけ,本 学会が担う役割や期待も大きくなっていると感じています。本年次大会では,より広範な領域,場面にお ける教育メディア研究の成果を共有し,議論を通して,豊かな学びと社会を築ける場を,皆様とともに創 りたいと存じます。 今回の年次大会では,懇親会も復活し,開催する予定です。懇親を深める場にしていただけると考えて おります。会場最寄り駅である JR 高槻駅は,JR 大阪駅から約 15 分,JR 京都駅から約 13 分とアクセスがよい場所にございます。大会実行委員会一同,皆様のご参加を心よりお待ち申し上げております。
1.大会プログラム
- 1日目 11/4(土)
10:00-12:00 理事会
12:00- 受付
13:00-13:50 総会
14:10-16:10 一般研究発表
16:30-17:30 シンポジウムⅠ 「”Next GIGA”を教室の片隅で考える」
18:00-20:00 懇親会
※ 一般研究発表は,1 件あたり 30 分での発表・質疑応答を予定
- 2日目 11/5(日)
09:00- 受付
09:30-11:30 課題研究発表
11:30-12:30 昼食
12:30-14:30 一般研究発表,企画委員会セッション同時開催
14:45-16:15 シンポジウムⅡ 「学会 30 周年企画」
2. シンポジウムⅠ・Ⅱ
シンポジウムⅠ「“Next GIGA”を教室の片隅で考える」
前田康裕(熊本大学),山口好和(北海道教育 大学)
「GIGA スクール構想」によって情報端末に触れる機会が増えた。それは同時に「知識,身体・五感,空間・時間,子どもと大人,学校と社会」とはそもそも何なのかを考える好機でもある。本シンポジウムで は,「ICT 活用」を基盤に新しい学びを追究する気鋭の学校教員お二人をお招きして,次の時代を拓く実 践のあり方を展望するとともに,メディアと私たち自身との関わりや,技術と世の中のあり方を考える 場としたい。
シンポジウムⅡ「学会 30 周年企画」
登壇者:未定
企画:宇治橋祐之(NHK 放送文化研究所)
日本教育メディア学会は 1994 年に「日本視聴覚教育・放送教育学会」として発足,5 年後の 1998 年の 第 5 回大会から名称を「日本教育メディア学会」と改称して,今年度は 30 回の節目の大会を迎える。こ の 30 年間の教育メディア研究の動向や,学会の前身となる「視聴覚教育研究協議会」(1954 年発足,1964 年からは「日本視聴覚教育学会」)と,「日本放送教育学会」(1955 年発足)の 2 つの学会の研究成果を踏 まえた上で,今後の学会の方向性について参加者と共に考える。
3. 申込み・締め切り等のスケジュール
7 月 10 日 課題研究プロポーザル受付開始
8 月 10 日 課題研究プロポーザル締切
8 月 31 日 課題研究結果通知・大会参加申込開始・一般研究発表申し込み開始
10 月 4 日 課題研究・一般研究原稿提出期限,事前参加費振込期限
4. 課題研究
1) 課題研究テーマ:教職課程及び教員研修におけるICT活用
小柳和喜雄(関西大学),寺嶋浩介(大阪教育大学)
中央教育審議会「令和の日本型学校教育」を担う教師の在り方が論議され、教職課程では、ICT活用に関する体系的なカリキュラムの構築と、運用、その質を確保する評価の取り組みが求められている。また自治体や学校の教員研修においても、同様にICT活用に関する取り組みが求められ、養成と研修をつなぐ教員の資質向上に資する指標の活用とその評価改善が求められいる。本課題研究では、昨年度に引き続いてICT活用に関する教員養成の取り組みについて議論するとともに、教員研修との接続について議論をしていきたい。
整備されたICT環境を生かし、学びの探究化・STEAM化が求められる中で、「情報活用能力」の重要性はこれまで以上に認識されつつある。しかしながら、学校現場を概観すると「情報活用能力」をどのように育成すればよいのかという実践面での課題とともに、授業者自身、また保護者や子どもたち自身も、どのような「能力」と理解すれば良いのかという根本的な問いに直面しているようにも見える。こうした問題状況について、さまざまな校園種の実践者及び多様な研究分野の構成員を要する日本教育メディア学会ならではのマルチアングルな視点をもとに、幅広く議論したい。
3) 課題研究テーマ:教育メディア研究におけるアートベース・リサーチの方向性
岸磨貴子(明治大学),川島裕子(関西大学)
教育メディア研究の新たな研究アプローチとしてアートベース・リサーチを取り上げる。アートベース・リサーチには少なくとも次の3つの特徴がある。ひとつは、認知だけでなく、情動的、身体的な知の構築ができることである。アートの形式はさまざまな特徴があり、その独特な形式によって、多様な側面(たとえば、感情、情景、空間、関係性など)を捉えることができる。次に、研究する人/される人の境界を超えて、共同的な知を構築することができる。そして、アート的な表現は、一般の読者にとっても親しみがわきやすく、これまで学術界の中だけでとどまる傾向があった研究成果を一般の人の手に届けることができ、それにより、対話をひらくことができる。この観点からも研究参加者は、研究される対象ではなく、共に知を構築する共同研究者として位置付けることができる。教育メディア研究は、歴史的に、研究者と実践者(特に教師)が共同で研究を行い、さまざまな知を蓄積してきた。それらの実践を捉え直し、また発展させるためアートベース・リサーチの観点からその方向性を探っていきたい。また、日本ではまだはじまったばかりのアートベース・リサーチに対しても、教育メディア研究が蓄積してきたメディア表現のさまざまな技法は、その実践の発展に貢献できるだろう。
4) 課題研究テーマ:学齢期前半までのICT活用の効果と課題
中村恵(畿央大学),小学校低学年のICT活用に詳しい研究者または学校現場の教員を予定,堀田博史(園田学園女子大学)
GIGAスクール構想で整備された情報端末の活用が、次のステージに進展する中、小学校低学年の情報端末の活用頻度は他学年と比べ、あまり高くない。小学校の教科書改訂時期を迎え、生活科をはじめとした教科でのICT活用頻度は増す、と予想される。一方、幼児教育でもICT活用が始まっている。保育システムの導入や担任に1人一台の情報端末の整備、さらに幼小接続を考えた幼児のICT活用である。保幼小接続にICT活用は、どのような役割を担うのかなど、学齢期前半までのICT活用について、参加者の皆さんと議論したい。
5) 課題研究テーマ:メディア・リテラシーを育む学習環境やカリキュラムの多様性
佐藤和紀(信州大学),後藤心平(広島経済大学)
メディア・リテラシーを育む学習環境は、学校、放送局、博物館など、多様な立場のもとで提供されてきた。それぞれがデザインする学習環境やカリキュラムにおいて、目的としている学習の内容や方法はどのように異なるのだろうか。これまで、それらを相互に比較したり、関連付けて検討することはあまりなされてこなかった。しかしながら、複雑に変化し続けるメディア社会に対応できる「メディア・リテラシーの拡張」が求められる中で、それぞれの取り組みから学び合うことには意義がある。そこで、本課題研究では、学校、放送局、博物館など、ある立場のもとで発展してきた学習環境やカリキュラムについて議論したい。
5. 大会参加費・懇親会参加費
Peatix で対応予定,事前は 10 月 4 日まで,それ以降は当日扱い
会員 3,000 円(事前),4,000 円(当日)
非会員 4,000 円(事前),5,000 円(当日)
学生会員 1,000 円(事前),2,000 円(当日)
学生非会員 2,000 円(事前),3,000 円(当日)
※ただし,非会員の現職教員は無料
懇親会 6,000 円(10 月 4 日までの申し込み)