ICoME2024(22nd International Conference for Media in Education 2024)を以下の通り開催しました。
▶︎日程:2024年8月21日(火)から23日(木)の3日間
▶︎場所:明治大学中野キャンパス
▶︎参加者数:238名
▶︎発表件数:145件(Concurrent Session:89件,Roundtable Session:56件)
ICoME(International Conference for Media in Education)2024は,今回で第22回目の実施となりました。日本教育メディア学会(JAEMS),韓国教育情報メディア学会(KAEIM),中国教育工学会(CAET),アメリカ TCC(Technology, Colleges and Community)オンラインカンファレンスとの連携によって,2024年8月21日から23日に,明治大学にて開催されました。なお,日本における対面でのICoME開催は,2016年以来となりました。
今回のICoMEは,日本,韓国,中国,米国に加え,フィリピン,タイ,ネパール,ソロモン諸島,キルギス,南アフリカ,オーストラリア,トルコ,ブラジル,モロッコ,メキシコ,ベルギーの16か国から合計238名の参加がありました。発表件数は145件で,開催直前の地震や台風の影響で数件はオンラインになりましたが,ほぼ予定どおり対面で実施することができました。
ICoME2024のテーマは「Performative Approach to Media Studies in Education」です。日本だけでなく世界各国で教育におけるICT活用が推進される中,従来の教師による教え込みから,学習者自らがこれらのICTを活用し,主体的で対話的,協働的な学びが行われています。こうした新しい教育の実態を捉える上で,米国の発達心理学者Lois Holzman博士のパフォーマンス心理学を手がかりに,新たな教育メディア研究の可能性を探ることにしました。
ICoME2024の1日目の午前では,Lois Holzman先生をお招きし「Performative Approach for Development in Education」をテーマに講演いただきました。教育メディアを単なる教える道具,学ぶ道具として扱うのではなく,教育学習環境およびそれを活用する教師や児童生徒を「変革」させうる主体として捉え,「パフォーマンス」を分析の単位として学習を捉えるパフォーマンス心理学について,その理論や具体的な実践について議論いただきました。質疑応答では,発達の場における「他者」として生成AIがどのような役割を担うのか,メタバースなどバーチャル空間におけるメディアのアレンジメントは児童生徒の学習発達にどのような影響を与えるかなどの議論が行われました。
午後のセッションでは,院生や実践者を中心としたRoundtable Sessionを実施しました。Roundtable sessionでは,発表よりも議論を中心とした場をつくりました。同じような興味関心・問題意識や方法論で研究を行う発表者らがグループとなり,それぞれ発表を行ったあと共通のテーマで議論を行いました。学会参加者はその議論を聞きながらも適宜参加し,その議論を深めていきました。
夕方のセッションでは,Meet-up & Networking Sessionを実施し,その中で大澤広暉先生(金城学院大学)のファシリテーションによる参加者の学術的交流として写真を用いたワークショップを実施しました。参加者らがパフォーマティブな関わりの中で研究や実践について会話ができることを目的としました。
翌日2日目の午前は山本良太会員(大阪教育大学)のコーディネートによってパネルディスカッションが行われました。初日のキーノートの理論的枠組みをもとに,日本,韓国,フィリピンで最新の教育実践に取り組む3人の実践者/研究者に登壇いただき,具体的な事例を紹介いただきました。鈴木慶樹教諭(瀬戸SOLAN小学校)には,児童の個別および協働的な探究を支えるICTを含む教育学習環境デザインについてお話しいただきました。Roberto B. Figueroa先生(University of the Philippines Open University)からは,メタバースにおける国際協働学習の事例が紹介されました。Jeeheon Ryu先生(Chonnam National University)からは,AR,VRなどXR,メタバースなどのバーチャル教育学習空間をどのようにデザインしているのか,教育理論などをもとに具体的な設計についてお話しいただきました。3人の登壇者のご発表のあと,ディスカッサントである岸磨貴子会員(明治大学)と川島裕子会員(関西大学)から,事例をPerformative Approachの観点から深めていくための指定討論を行いました。さらに,萩原健先生(明治大学)から,「舞台」の観点から教育学習環境を深めるご講演をいただきました。萩原先生は,舞台芸術を専門とされており,本学会のテーマであるパフォーマンスと密接に関連する「舞台」をメタファーとすることで,舞台としての教室をどのようにデザインすればいいかについて理解を深めることができました。パネルディスカッションの後半では,これらの議論をもとに参加者同士がグループになって意見交換し,ホール全体で共有しました。
2日目の午後は,Concurrent Sessionを実施しました。研究者による発表であり,学術的な議論が活発に交わされていました。夕方には,本学会の主要団体である日本,韓国,中国,米国の代表者による講演が行われました。各国における教育メディア研究の動向やトレンドが紹介され,共通のテーマやそれぞれが持つ異なる問題意識が浮き彫りになりました。
3日目は,デジタルシンキングツール,ドキュメンタリー演劇,アートベース・リサーチ,AIリテラシー,平和構築,探究学習のデザイン,COILをテーマとした7つのワークショップが実施されました。創作や対話を中心としたもので,国際色豊かな参加者同士で活発な議論が行われました。
また,3日間を通して,語学学習のためのメタバースの体験,AIを活用した語学学習,バーチャルリライティにおける協働学習の体験など,7つのShowcaseが設置されました。 ご参加くださいました皆さま,Showcaseに出展いただいた企業や大学の皆さま,学会運営に協力してくださったスタッフの方々に対し,心より御礼申し上げます。 次年度のICoME2025は,KAEIMのホストによって韓国にて開催されます。開催校は,仁川市のInha Universityを予定しています。日程や最終的な開催場所については,確定次第学会ウェブサイトにて報告いたします。次年度も皆さまと会場にてお会いできることを心より楽しみにしております。